「今月の返済、間に合わないかもしれない」——その不安を抱えている方へ。
私はフラット35の債権回収を専門とするサービサー(債権回収会社)で20年間、責任者として数千件の延滞案件に携わってきました。その経験から断言します。早く動いた人ほど、家を守れています。
住宅金融支援機構のリスク管理債権の状況を見ると、住宅ローン全体の約3%が何らかの返済トラブルを抱えているとされています。フラット35の貸出残高は約25兆円規模ですから、数千億円分の債権が延滞や条件変更の対象になっている計算です。あなただけの問題ではありません。
しかし、2024年の不動産競売新受事件数は17,559件(前年比111.3%増、司法統計)と増加傾向です。この中には、もっと早く動いていれば競売に至らなかった方が大勢います。
この記事では、返済が苦しくなったときに「機構側では何が起きているか」を踏まえながら、最初にとるべき3つの行動を具体的に解説します。
目次
返済が遅れると、機構側では何が起きているか——内部のタイムラインを公開
一般的な記事には「早めに相談を」と書かれていますが、なぜ早めに相談すべきなのかを、機構側・サービサー側の内部動向から説明している記事はほとんどありません。私がサービサーで20年間見てきた、債権者側のリアルなタイムラインをお伝えします。
フラット35は住宅金融支援機構が債権者です。返済が滞ると、以下の流れで対応が進みます。
【1ヶ月目】様子見のフェーズ——対応の余地が最も大きい
督促状と電話連絡が始まります。しかしこの段階は「様子見」です。機構内部ではまだ専任の担当者がつく前の段階で、システムが自動的に出す定型の督促に過ぎません。
サービサーの現場感覚で言うと、この段階で本人から連絡が来れば「まだ大丈夫な案件」として扱われます。交渉の柔軟性が最も高い時期です。
【2〜3ヶ月目】案件として管理開始——担当者がつく
より強い督促に切り替わり、内部では案件として正式に管理が始まります。専任の担当者がつき、延滞の経緯や回収の見込みが分析されます。
CIC・JICC・KSCへの事故情報の登録は、延滞が61日以上または3回以上で行われます。つまり2ヶ月目に入ると信用情報への影響が現実味を帯びます。ただし、この時点でもまだ交渉の余地は十分にあります。
【4〜6ヶ月目】期限の利益喪失の予告——分割払いの権利を失う直前
「期限の利益の喪失予告」が届きます。これは「分割払いの権利を失い、残債の一括返済を求める」という最終警告です。通常、滞納から4〜6ヶ月でこの通知が届きます。
サービサーの現場では、この段階でようやく慌てて連絡してくる方が多いのですが、正直に言って選択肢は1ヶ月目の半分以下に狭まっています。
【6ヶ月以降】競売手続きの準備——選択肢が急激に狭まる
期限の利益を喪失すると、残債の一括返済を求められます。応じられなければ競売手続きの準備が本格化します。2024年の競売新受事件数17,559件のうち、住宅ローンの延滞が原因のものが大半を占めています。
競売での売却価格は市場相場の約6〜7割程度。売却後もローン残債が残ることがほとんどです。「家を失ったのに借金だけが残る」——私がサービサーで何度も見てきた最悪の結末です。
ここで強調しておきたいのは、機構側のタイムラインは淡々と進むという点です。連絡を無視していても、手続きは止まりません。あなたが動かなければ、機構は決められた手順に従って粛々と次のステップに進むだけです。
絶対にやってはいけない3つのこと——サービサーが見た失敗パターン
20年間の現場経験で、状況を悪化させた方に共通するNG行動を3つ紹介します。
NG1:督促の電話・郵便を無視する
これが断トツで最悪の対応です。機構側は「連絡がとれない」と判断すると、手続きを加速させます。私がサービサーで担当した競売案件の中で、「最初の段階で連絡さえ取れていれば、ここまで悪化しなかった」というケースは半数以上ありました。連絡がとれる相手には、交渉の余地を持たせることができます。連絡がとれない相手には、事務的に手続きを進めるしかないのです。
NG2:カードローンや消費者金融で穴埋めする
フラット35の金利は1〜2%台ですが、カードローンは年利14〜18%。一時的にフラット35の延滞は解消できても、多重債務に陥り、最終的にすべてが破綻するケースをサービサーで何十件と見ました。火に油を注ぐ行為です。
NG3:「来月には何とかなる」と先送りにする
収入が戻る見込みがある場合でも、根拠のない楽観は禁物です。機構側の手続きは「来月には解決する予定」では止まりません。「先送り」が1ヶ月続くごとに、選択肢は確実に狭まっていきます。
最初にすべき3つの行動——サービサー経験20年の結論
行動1:機構(またはサービサー)に自分から連絡する
これが最も重要な行動です。
督促を受けてから折り返すのと、自分から先に連絡するのでは、担当者の印象が変わります。そして印象は、交渉の柔軟性に直結します。サービサーで20年間見てきた結論として、「延滞直後に自分から連絡した人」の8割以上は何らかの形で返済を継続できています。
電話で伝えるべきことは3つです。①返済が苦しくなった理由(失業、病気、離婚、収入減など具体的に)。②いつ頃から状況が改善する見込みか。③今払える金額はいくらか。
「全部正直に話すのが怖い」という方がいますが、曖昧にするより具体的に話した方が、返済猶予や条件変更につながりやすいです。機構側も、連絡がつかない延滞者より、状況を説明してくれる延滞者のほうがずっと対応しやすいのです。
行動2:返済条件の変更(リスケジュール)を申請する
フラット35には公式に返済方法変更(リスケジュール)の制度が整備されています。住宅金融支援機構の公式サイトでも明示されている制度で、以下の3タイプがあります。
Aタイプ:返済期間の延長・元金据置——返済期間を最長15年延長し、月々の返済額を減らす方法です。一定期間(最長3年)は元金の支払いを据え置き、利息のみの支払いにすることも可能です。
Bタイプ:一定期間の返済額減額——収入が一時的に減少した場合に、一定期間の返済額を引き下げる方法です。減額期間終了後は元の返済額(または増額された返済額)に戻ります。
Cタイプ:ボーナス返済の見直し——ボーナス返済分を毎月の返済に組み替える、またはボーナス返済を取りやめる方法です。
住宅金融支援機構のデータによると、貸出条件変更に応じた債権(リスケ債権)は、他のリスク管理債権と比べてデフォルト率が低いとされています。つまり、早期にリスケジュールをすれば返済を継続できる可能性が高いということです。
重要なのは、リスケは「滞納してから」ではなく「苦しくなりそうな段階」で申請するほど通りやすいということです。金融庁も金融機関に対して返済条件の見直し相談に柔軟に対応するよう求めています。私がサービサーの現場で「もっと早く来てくれれば」と感じた案件は数え切れません。
行動3:専門家に相談する(弁護士・司法書士・公的窓口)
自分だけで抱え込まないことも重要です。特に以下のケースでは早めに専門家を頼ってください。すでに2ヶ月以上滞納している場合、住宅ローン以外にも借金がある場合、離婚や相続など権利関係が複雑な場合です。
弁護士に依頼する場合、個人再生の住宅ローン特則を使えば自宅を残したまま他の借金を大幅に減額できる可能性があります。費用は50〜60万円が相場ですが、法テラスを利用すれば立替制度があります。司法書士は弁護士より費用が抑えられ、30万円前後が目安です(ただし140万円超の案件は扱えません)。
弁護士や司法書士に入ってもらうと、機構側との交渉窓口を一本化でき、精神的な負担も大きく減ります。
無料で相談できる公的窓口一覧
「どこに相談すればいいかわからない」という方は、まず以下の公的窓口を利用してください。いずれも無料で秘密厳守です。
住宅金融支援機構はフラット35利用者向けの返済相談窓口を設置しています。返済方法の変更について具体的なアドバイスが受けられます。全国銀行協会(全銀協)相談室は住宅ローンを含む銀行取引全般の相談に対応しています。法テラス(日本司法支援センター)は弁護士・司法書士への無料相談が可能で、費用の立替制度もあります。各自治体の消費生活センターでも多重債務や家計の悩みを相談できます。
一人で悩む時間が長いほど、状況は悪化します。まず電話1本、相談してください。
まとめ——「早く動いた人が家を守れている」、これが20年の結論
フラット35の返済が苦しくなったとき、最初にすべき3つの行動をまとめます。①機構・サービサーに自分から連絡する。②返済条件変更(リスケジュール)を申請する。③弁護士・司法書士・公的窓口に相談する。
サービサーで20年間、数千件の延滞案件を担当してきた中で、家を守れた方に共通しているのは「早く動いた」という一点です。逆に、競売に至った方のほとんどは、初期段階で連絡を取らず、状況が悪化してから慌てて動いた方でした。
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2024年の競売新受事件数は17,559件と増加しています。しかし、この記事を読んでいるあなたはまだ間に合います。今日、機構または取扱金融機関に電話してください。その1本の電話が、あなたの家と家族を守る第一歩になります。
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サービサー時代、「もっと早く専門家に相談していれば」というケースを数え切れないほど見てきました。相談は無料です。今の状況を伝えるだけで、取れる選択肢が明確になります。
この記事を書いた人
住宅ローン専門のサービサー(債権回収会社)で20年間、数千件の延滞・破綻案件を責任者として担当。銀行が教えてくれない「債権者側のリアル」をもとに、住宅ローンで悩む方が最善の判断をできるよう情報を発信しています。
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📞 公的な相談窓口(無料)
- 住宅金融支援機構の相談窓口:0120-0860-35(通話無料)
- 法テラス:0120-078374(通話無料)
- お住まいの自治体の住宅相談窓口(無料)

