住宅ローンがある場合の自己破産|家はどうなる?手続きの流れと費用を元・住宅ローン回収責任者が解説

住宅ローンがある場合の自己破産

「住宅ローンが払えない…自己破産したら家はどうなるの?」「自己破産の費用はいくら?」――住宅ローンの返済が完全に行き詰まったとき、自己破産は借金をゼロにできる最後の手段です。しかし、代わりに自宅を手放すことになりかねないため、正しい知識と準備が不可欠です。

サービサー(債権回収会社)で長年、数千件の住宅ローン破綻案件を担当してきた筆者が、自己破産の仕組み・手続きの流れ・費用・家族への影響まで、債権者側の視点も交えて徹底解説します。

⚠️ この記事を読む前に確認してください

自己破産はすべての借金がなくなる代わりに、自宅を含む財産を手放す手続きです。住宅ローンだけが問題なら、任意売却や個人再生(住宅ローン特則)で自宅を残せる可能性があります。まずは弁護士に無料相談して、自己破産が本当に最適かどうかを確認してください。

自己破産とは?基本の仕組み

📊 自己破産の年間申立件数

最高裁の司法統計によると、2024年の自己破産(個人)申立件数は76,309件(前年比+8.1%)と12年ぶりの高水準に達しています。物価高や金利上昇を背景に増加傾向にあり、債務整理の中で一般的な選択肢の一つとなっています。

出典:最高裁判所「司法統計年報 令和6年版」
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/

自己破産とは、裁判所に申立てを行い、借金の支払い義務を免除(免責)してもらう手続きです。住宅ローン・カードローン・消費者金融など、すべての借金が対象になります。

2024年の司法統計によると、自己破産の申立件数は全国で76,309件。うち住宅ローンが原因の破産は約15〜20%を占めています。免責許可率は約97%と高く、申立てをすればほぼ確実に借金はゼロになります。

📊 自己破産の基本データ

年間申立件数 約7万6,309件(2024年)
免責許可率 約97%
住宅ローン起因の割合 約15〜20%
手続き期間 同時廃止:3〜6ヶ月/管財事件:6〜12ヶ月
費用目安 同時廃止:30〜50万円/管財事件:50〜80万円

📊 元サービサー責任者の現場メモ|「自己破産は人生の終わり」は虚像

サービサー側の本音をお伝えします——債務者が連絡を取れなくなり、強制執行する財産もなければ、サービサーは「破産待ち」の状態で長期管理に入ります。「無限に追い詰められる」イメージは虚像で、実際にはサービサーも人手不足で、回収の見込みがない案件にいつまでも資源を割けない、というのが現実です。

残債処理の現場感覚として:

  • 法的原則:期限の利益喪失中なので一括請求
  • 実務:ほとんどのケースで分割払いに応じる
  • 本音:返済能力に応じた少額分割でも受け入れる/回収不能な債権は長期管理に移行する

読者の方への結論:残債が大きすぎて分割で返しきれない場合、自己破産による免責は決して敗北ではない。サービサー側もその現実を理解しており、「破産で免責→生活再建」というルートは、家族と人生を守る合理的な選択肢の一つです。

自己破産したら家(自宅)はどうなる?

結論から言うと、自己破産をすると自宅は原則として手放すことになります。これは自己破産の最大のデメリットであり、多くの方が最も心配されるポイントです。

住宅ローン返済中の場合

住宅ローンの返済中に自己破産すると、以下の流れで自宅を失います。

①抵当権の実行――住宅ローンには抵当権が設定されているため、破産手続きとは別に、金融機関が抵当権を実行(競売の申立て)します。サービサーの経験では、破産申立てから3〜6ヶ月で競売開始決定が出るケースが多いです。

②破産管財人による売却――管財事件の場合、破産管財人が自宅を任意売却することもあります。競売より高値で売却できるため、債権者にとっても有利です。

住宅ローン完済済みの場合

住宅ローンを完済していても、自宅の評価額が20万円を超える場合は換価処分の対象になります。破産管財人が売却し、その代金を債権者に分配します。

📌 自宅を残したいなら「個人再生」を検討

個人再生の住宅ローン特則を使えば、住宅ローンの返済を続けながら他の借金を大幅に減額できます。安定した収入があり、住宅ローン以外の借金が5,000万円以下であれば利用可能です。「家を残したい」という方は、自己破産の前にまず個人再生を検討してください。

自己破産の手続きの流れ【7ステップ】

住宅ローンがある場合の自己破産は、不動産という高額財産があるため「管財事件」として処理されるケースがほとんどです。以下が一般的な流れです。

ステップ 内容 期間目安
弁護士に相談・依頼(受任通知の発送で督促ストップ) 即日〜1週間
必要書類の準備(住民票・給与明細・固定資産評価証明書等) 1〜3ヶ月
裁判所に破産申立て ②完了後すぐ
破産手続開始決定・管財人の選任 申立後1〜2週間
管財人による財産調査・自宅の売却 3〜6ヶ月
債権者集会(通常1〜3回開催) ⑤と並行
免責許可決定(借金ゼロに) ⑥完了後1〜2ヶ月

全体の期間は6ヶ月〜1年程度です。弁護士に依頼した時点で受任通知が金融機関に届き、督促・取り立てがすべてストップするため、精神的な負担は大きく軽減されます。

自己破産にかかる費用

「お金がないから破産するのに、費用がかかるの?」と疑問に思われるかもしれません。自己破産の費用は主に、裁判所への費用と弁護士費用の2つに分かれます。

費用項目 同時廃止 管財事件
裁判所への予納金 1〜3万円 20〜50万円
弁護士費用 25〜40万円 30〜50万円
その他(印紙代等) 約2万円 約2万円
合計目安 30〜50万円 50〜100万円

住宅ローンがある場合は不動産があるため管財事件になることが多く、50〜100万円程度が目安です。ただし、以下の方法で費用負担を軽減できます。

法テラスの利用――収入が一定以下の方は、法テラス(日本司法支援センター)の弁護士費用立替制度を利用できます。月5,000〜10,000円の分割返済が可能で、生活保護受給者は返済免除になります。

弁護士費用の分割払い――多くの法律事務所が分割払いに対応しています。受任通知の発送後は返済がストップするため、その分を弁護士費用に充てるのが一般的です。

自己破産のメリット・デメリット

メリット デメリット
すべての借金がゼロになる 自宅を含む財産を失う
督促・取り立てがストップする 信用情報に5年(個人再生・自己破産の場合は官報公告でKSCのみ最長10年)登録される
収入要件がない(無収入でもOK) 職業制限がある(保険外交員・警備員等)
差押え・競売を止められる 官報に掲載される
生活に必要な財産は残せる(99万円以下の現金等) 連帯保証人に請求がいく

家族への影響は?よくある誤解を解消

自己破産について最も多い相談が「家族への影響」です。サービサーとして多くの破産案件に関わってきた経験から、よくある誤解を解消します。

誤解①「家族の信用情報にも傷がつく」――これは間違いです。信用情報は個人単位で管理されるため、家族の信用情報には一切影響しません。ただし、配偶者が連帯保証人になっている場合は、配偶者に請求がいきます。

誤解②「家族の財産も取られる」――破産で処分されるのは本人名義の財産のみです。配偶者や子供名義の預貯金・財産は対象外です。ただし、破産直前に家族名義に移した財産は「財産隠し」として問題になります。

誤解③「戸籍に載る」――自己破産が戸籍や住民票に記載されることはありません。官報には掲載されますが、一般の方が官報を見ることはほぼないため、周囲に知られる可能性は低いです。

誤解④「会社をクビになる」――自己破産を理由に解雇することは不当解雇にあたります。ただし、保険外交員・警備員・士業(弁護士・税理士等)は手続き中に資格制限を受けます(免責許可で復権)。

自己破産と任意売却の関係

サービサーの立場から言うと、住宅ローンがある場合の自己破産では、自己破産の前に任意売却を行うことを強くお勧めします。理由は以下の3つです。

理由①引越し費用を確保できる――任意売却では、売却代金から引越し費用(10〜30万円程度)を控除してもらえる場合があります。競売ではこの配慮はありません。

理由②退去時期を調整できる――任意売却なら買主との交渉で退去時期を調整できます。競売の場合は、落札者から明け渡しの強制執行を受ける可能性があります。

理由③管財事件の費用を抑えられる――自己破産前に自宅を売却しておけば、不動産がない状態で破産申立てができるため、同時廃止で処理される可能性が高くなり、予納金を大幅に節約できます。

💡 実務上のベストな流れ

①弁護士に相談→②任意売却を先行→③売却完了後に自己破産申立て→④同時廃止で処理。この順番で進めることで、費用を最小限に抑えつつ、引越し費用の確保が可能になります。この流れで進めた方の多くが同時廃止で処理される傾向にあります。

自己破産後の生活――再スタートに向けて

自己破産は「人生の終わり」ではなく、「経済的な再スタート」です。免責許可を受けた後の生活について知っておきましょう。

住まい――自宅を失った後は賃貸住宅に移ることになります。信用情報に事故情報が載るため、家賃保証会社の審査が通りにくくなる場合があります。公営住宅や保証人不要の物件を検討してください。

クレジットカード――5年(個人再生・自己破産の場合は官報公告でKSCのみ最長10年)は新規作成が困難です。デビットカードやプリペイドカードで代用できます。

新たな借入――同じく5年(個人再生・自己破産の場合は官報公告でKSCのみ最長10年)は住宅ローン・カードローンの審査に通りにくくなります。ただし、信用情報が回復した後は、再び住宅ローンを組むことも可能です。

仕事――資格制限は免責許可で解除されます。一般的な会社員であれば、仕事への影響はほぼありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 住宅ローンの残債が売却額より多い場合、差額はどうなりますか?

自己破産で免責許可が下りれば、住宅ローンの残債(売却額との差額を含む)はすべてゼロになります。例えば、ローン残高3,000万円で自宅が2,000万円でしか売れなかった場合、差額の1,000万円も免責の対象です。

Q. 自己破産は何回でもできますか?

法律上の回数制限はありませんが、前回の免責許可確定の日から7年以内の免責申立ては「免責不許可事由」(破産法第252条1項10号イ)にあたります。ただし、裁判所の裁量により免責が認められるケースもあります。

Q. 自己破産すると年金はもらえなくなりますか?

いいえ。年金受給権は差押禁止財産であり、自己破産しても年金は受け取れます。将来の年金額にも影響しません。

Q. ギャンブルや浪費が原因でも自己破産できますか?

ギャンブルや浪費は免責不許可事由ですが、裁判所の裁量免責により、実際にはほとんどのケースで免責が認められています。反省文の提出や家計の見直しなど、誠実な姿勢を示すことが重要です。

まとめ――自己破産は「再スタート」の手段

住宅ローンが払えなくなったとき、自己破産は確かに「最後の手段」です。しかし、借金をゼロにして人生をやり直せる、法律で認められた正当な権利でもあります。

サービサーとして長年、数千件の案件を見てきた結論です。自己破産で再スタートを切った方の多くは、3〜5年後には安定した生活を取り戻しています。大切なのは、「恥ずかしい」「もう少し頑張れる」と先延ばしにしないことです。

特に住宅ローンがある場合は、自己破産の前に任意売却を行い、費用を抑えて円滑に手続きを進めることが重要です。まずは弁護士に無料相談して、あなたの状況に合った最善の方法を見つけてください。

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この記事を書いた人

住宅ローン専門のサービサー(債権回収会社)で長年、数千件の延滞・破産案件を責任者として担当。銀行が教えてくれない「債権者側のリアル」をもとに、住宅ローンで悩む方が最善の判断をできるよう情報を発信しています。

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