競売の現況調査で執行官が来たら|元・住宅ローン回収の責任者が教える”何をされるか”と、まだ間に合う手

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競売の開始決定通知が届き、息が詰まる思いをされているかもしれません。「家の中を全部見られるのか」「拒否できないのか」「これはもう終わったということなのか」。封筒を開けた手が止まったまま、夜になっても気持ちが落ち着かない。そういう状態でこのページを開いた方が多いと思います。

先に、いちばん大事な結論をお伝えします。執行官が現況調査に来た=即、家を失う、ではありません。現況調査は競売手続きのまだ序盤の作業で、ここから実際に明渡しまでには、裁判所のスケジュールにもよりますが数ヶ月単位の時間があります。そしてその間、期間入札が始まる前であれば、競売を任意売却に切り替えられる可能性が残っていることが少なくありません。

私はサービサー(債権回収会社)で、住宅ローンの回収業務に長く携わってきました。回収する側の立場から、競売に進んでいくたくさんのケースを見てきた人間です。その経験から正直にお伝えすると、現況調査の通知が来た段階で「もう何をしても無駄だ」と諦めてしまう方が、本当に多い。でも、諦めるにはまだ早いのです。

この記事では、現況調査で実際に何が行われるのかを制度に沿って正確に説明し、「来たらもう終わりなのか」「いつ家を出るのか」というあなたの不安にお答えします。そして、まだ打てる手を打つために、今日するべきことをお伝えします。

目次

現況調査とは何か|誰が、いつ、何のために来るのか

現況調査とは、競売にかける不動産が「今どういう状態にあるか」を裁判所が調べる手続きです。誰が住んでいるのか、どんな間取りか、建物や土地の状態はどうか。こうした情報を確認し、競売の入札に必要な資料(物件明細書・現況調査報告書・評価書のいわゆる「3点セット」)を作るために行われます。

来るのは「執行官」と「評価人」

現況調査に訪れるのは、主に執行官評価人(不動産鑑定士)です。執行官は裁判所に所属し、競売の現場の手続きを担当する立場の人。評価人は、その物件の価値を鑑定する不動産の専門家です。場合によっては補助者が同行することもあります。

回収会社は、競売の現況調査には立ち会いません。「サービサーの人も一緒に来て、家の中をじろじろ見られるのでは」と心配される方がいますが、それは違います。現況調査はあくまで裁判所の手続きで、執行官と評価人が行うもの。私たち回収する側の担当業務の外でした。来るのは裁判所側の人間だけで、債権者や回収会社の人間が同席して室内を見て回ることはありません。そこは安心してください。

いつ来るのか|開始決定通知からおおむね1ヶ月後が一般的

現況調査が行われる時期は、競売の開始決定通知が届いてからおおむね1ヶ月後くらいが一般的です。ただしこれは目安で、裁判所のスケジュールによって前後します。事前に「○月○日に現況調査を行います」と日時の通知が来る場合もあれば、明確な事前通知なく執行官が訪れる場合もあります。

競売開始決定通知そのものについては、競売開始決定通知が届いたらまず確認すべきことで詳しく解説しています。通知の内容や全体像をまだ整理できていない方は併せてご覧ください。

現況調査で実際に何をされるのか

ここが、いちばん不安に感じておられる部分だと思います。「家の中を見られる」というのが具体的にどういうことなのか。制度上、一般的にどう行われるのかを順を追って説明します。

外観の確認と写真撮影

まず、建物の外観や敷地の状況が確認されます。建物の構造、おおまかな築年数の見立て、土地との位置関係など。あわせて外観や敷地の写真撮影が行われるのが一般的です。これらは競売の入札希望者に物件の状態を伝える資料になります。

室内の確認・間取りの把握・写真撮影

続いて、可能であれば室内に立ち入っての確認が行われます。間取り、各部屋の状況、設備の有無などを確認し、室内の写真撮影も行われるのが通常です。「家の中を見られる」とは、主にこの部分を指します。

自分の生活する空間に人が入り写真を撮られるのは、誰にとってもつらいことです。ただ、これは個人を辱めるためではなく、「物件の客観的な状態を記録する」事務的な手続きとして行われるものだと知っておいてください。撮影されるのは部屋の状態であって、私物の中身を詮索するためのものではありません。

占有状況の聞き取り

誰がその物件に住んでいるのか、所有者本人か、家族か、賃借人がいるのか、といった占有状況の聞き取りが行われます。賃貸に出している場合は、賃貸借契約の有無や内容も確認されることがあります。競売後に誰が物件を明け渡すことになるのかを判断するために必要な情報です。

よくある不安への回答

現況調査について、相談の場でよく聞かれる質問にお答えします。

調査を拒否できますか?

結論から言うと、拒否しても調査は実施されます。執行官には、現況調査のために必要な場合、建物への立入りや施錠された部屋を開けさせるなどの権限が法律上認められています(民事執行法に基づく権限です)。正当な理由なく立入りを拒んでも、執行官は調査を進めることができます。

ですから、居留守や強硬な拒否で調査そのものを止めることはできず、むしろ余計な負担が増えるだけになりがちです。気が進まないのは当然ですが、調査は粛々と進むものだと受け止める方が、結果としてご自身のためになります。

立ち会いは必要ですか?

所有者本人が必ず立ち会わなければならないわけではありません。ただ、占有状況の聞き取りがあるため、ご本人がいた方が話が早く済むことはあります。不在時の扱いは状況によって異なるので、事前に日時の通知が来た場合は、対応を裁判所(執行官室)に確認しておくとよいでしょう。

近所に知られませんか?

表札に「競売物件」と貼られるわけではありませんが、外観の撮影などが行われるため、状況によっては近隣の目に触れる可能性はあります。ご近所への影響を気にされる方は多いですが、こればかりは手続き上避けられない部分があります。

ただ、近所に知られたくないという気持ちは、任意売却を選ぶ理由のひとつにもなります。競売は裁判所の公告で物件情報が公開されますが、任意売却は通常の不動産売買に近い形で進むため、周囲に知られにくいという利点があります。この点はあとの章でもう一度触れます。

賃貸に出している場合はどうなりますか?

第三者に賃貸している場合は、賃借人への聞き取りや賃貸借契約の確認が行われることがあります。賃借人がいる場合の競売後の扱いは、契約の時期や内容によって法律上の保護の度合いが変わるなど複雑です。賃貸中の物件が競売にかかっている場合は、早めに専門家へ相談することを強くおすすめします。

現況調査の後、競売はどう進むのか

「現況調査が来た=もうすぐ追い出される」と思い込む方が多いのですが、実際には現況調査から明渡しまでにはいくつもの手続きの段階があります。ここを正しく理解することが、「自分にはどれくらいの時間が残っているのか」を冷静に把握する第一歩になります。

競売の一般的な流れは、おおむね次のとおりです。ただし、それぞれにかかる期間は裁判所のスケジュールや個別の事情によって大きく変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。

段階内容タイミングの目安
① 競売開始決定裁判所が競売の手続きを開始。通知が届く起点
② 現況調査執行官・評価人が訪問。室内外の確認・撮影開始決定から1ヶ月後くらい
③ 期間入札の公告物件情報・3点セットが公開され、入札期間が決まる調査後、数ヶ月後(裁判所による)
④ 期間入札入札希望者が一定期間内に入札する公告で定められた期間
⑤ 開札入札を開封し、最高価で買受けを申し出た人を決定入札期間終了後
⑥ 売却許可決定裁判所が売却を許可する決定を出す開札後しばらくして
⑦ 代金納付買受人が代金を納付し、所有権が移転する許可決定の確定後
⑧ 明渡し物件を買受人に引き渡す(退去)代金納付後、協議または引渡命令等による

この表からわかるように、現況調査(②)はまだ序盤です。ここから③期間入札公告、④入札、⑤開札……と進み、実際に家を出る⑧明渡しまでにはいくつもの段階を経ます。全体でどれくらいかかるかは裁判所のスケジュール次第で一概には言えませんが、現況調査が来たからといって、来週・来月すぐに退去しなければならないものではないのです。

回収する側として、ひとつお伝えしておきたいことがあります。回収会社から「○月○日までに出ていってください」という退去通知が届くことは、ありません。競売は裁判所の手続きですから、退去のタイミングは競売の進行と買受人との関係で決まるもので、私たち債権者側が「いつ出ろ」と直接通知するものではないのです。

これは一見、猶予があるように聞こえるかもしれません。でも私が現場で何度も見てきたのは、「誰も出ていけと言ってこないから」と動かないまま、気づけば期間入札が始まっていたケースです。自分から動かないと、時間だけが静かに過ぎていく。これがいちばん怖いところです。

まだ間に合う手|期間入札が始まる前なら、できることがある

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。現況調査が来ても、まだ打てる手があります。

① 期間入札開始前なら、任意売却に切り替えられる可能性がある

競売の手続きが進んでいても、法律上は、買受人が代金を納付するまでの間であれば、競売の取下げ自体は可能とされています。ただし実務上は、期間入札の手続きが始まってしまうと取下げのハードルが一気に上がり、現実的には「期間入札が始まる前」がほぼ最終リミットだと考えてください。

つまり、上の表でいう③期間入札の公告・④入札に入る前であれば、競売を取り下げて任意売却に切り替えられる余地が残っていることが多いのです。任意売却とは、債権者の同意を得て、競売ではなく通常の不動産売買に近い形でご自宅を売る方法です。現況調査が来た時点で「もう終わった」と諦める方を私は何人も見てきましたが、「競売の通知が来た=詰み」ではありません。問題は、その余地があるうちに動けるかどうかです。

なぜ任意売却の方がよいのか。大きな理由は次のとおりです。

  • 競売より高く売れる可能性が高い:競売は市場価格より安く落札される傾向があります。任意売却で市場価格に近い金額で売れれば、残る借金(残債)を圧縮できます。
  • 残債と生活再建の負担が変わる:残債が減れば売却後の返済負担が軽くなり、生活の立て直しがしやすくなります。
  • 周囲に知られにくい:競売のように物件情報が公に公告されないため、近隣に知られにくい利点があります。
  • スケジュールを調整しやすい:競売に比べ、退去時期などを交渉できる余地があります。

任意売却と競売の違いは任意売却と競売の違いを徹底比較任意売却完全ガイドで詳しく解説しています。判断材料として、ぜひ目を通してください。

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② 一括返済・親族からの援助で競売を止める

滞納分や残債を一括で返済できる資力があれば、あるいは親族からの援助で可能であれば、競売を止められる場合があります。ただし正確に知っておいていただきたいのは、期限の利益を喪失したあとは、滞納分だけでなく残元金の全額を一括で支払う必要が出てくるということです。

「期限の利益の喪失」とは、簡単に言えば「分割で返していい権利」を失うことです。一般に銀行系のローンでは3ヶ月程度、フラット35では6ヶ月程度の滞納で期限の利益を喪失するとされますが、これは金銭消費貸借契約書の定めによるため、ご自身の契約書を必ず確認してください。

そして期限の利益を喪失すると、遅延損害金が残元金の全額にかかってきます。遅延損害金の利率は年14.5〜14.6%程度(契約による)が一般的です。たとえば残元金が3,000万円なら、年14.5%で1日あたり約1.2万円もの遅延損害金が発生する計算で、1ヶ月放置すれば30万円以上です。時間が経つほど返すべき総額は膨らんでいく。これも「動かないこと」のコストの大きさを表しています。

③ 弁護士・専門家に相談する

競売は裁判所の手続きであり、関わる法律も複雑です。任意売却に切り替えるにも、債権者との交渉や段取りには専門的な知識が要ります。一人で抱え込まず、任意売却に詳しい不動産会社や弁護士などの専門家に早めに相談することが、結果として最善の道につながることが多いです。

競売を回避する具体的な方法は競売を回避する5つの方法でまとめています。自分にどの選択肢があるのかを知るためにも参考にしてください。

やってはいけないこと

最後に、現況調査の通知を受け取ったあとに「やってはいけないこと」を、回収する側を見てきた立場からお伝えします。

① 放置する

いちばんやってはいけないのが、何もせず放置することです。放置して状況が良くなることは、何ひとつありません。遅延損害金は日々積み上がり、競売の手続きは止まらず進み、任意売却に切り替えられる期限(期間入札開始前)も刻々と近づきます。現実を直視したくない気持ちは痛いほどわかりますが、放置は問題を先送りにするだけでなく、選択肢を確実に減らしていくのです。

② 引越し先だけを探す

「もうダメだ」と思い込み、退去後の引越し先探しだけに気持ちが向いてしまう方がいます。住む場所の確保は大切ですが、その前に「競売より有利に手放す手が残っていないか」を確認するのが先です。任意売却に切り替えられれば、退去のスケジュールも交渉しやすくなり、引越しの段取りもむしろ立てやすくなります。順番を間違えないでください。

③ 「まだ時間がある」と残り時間の計算だけして安心する

これが、私が現場でいちばん多く見てきた、そしていちばん危険なパターンです。

「現況調査は開始決定から1ヶ月後だった。入札はまだ先だろうから、あと数ヶ月はあるはずだ」——こうやって残り時間を計算し始める人ほど、手遅れになります。「まだ大丈夫」という安心が、動かない理由に変わってしまうからです。裁判所のスケジュールは思ったより早く進むこともあり、任意売却に切り替えるには債権者との交渉や買い手探しに時間がかかります。「まだ猶予がある」と数えている間に、その猶予は使い切られていく。放置して良くなることは何一つありません。現況調査の通知が来たら、残り時間を計算するのではなく、その日に動いてください。これが、回収する側を長く見てきた私が、心からお伝えしたい一点です。

よくある質問(FAQ)

Q. 現況調査が来ない(通知が来ない)のですが、競売はもう進んでいないということですか?

いいえ、そうとは限りません。現況調査の事前通知が来ないまま執行官が訪れる場合もありますし、開始決定から現況調査までのタイミングは裁判所のスケジュールによって前後します。「調査が来ない=競売が止まった」ではありません。開始決定通知が届いている時点で手続きは進行していますので、早めに対応を検討してください。

Q. 現況調査の立入りを拒否したら、競売を止められますか?

止められません。執行官には現況調査のために必要な立入りなどの権限が法律上認められており、正当な理由なく拒んでも調査は実施され、競売手続き自体も進みます。調査を止めることに労力を使うより、任意売却への切り替えなど前向きな手を検討する方が、ご自身のためになります。

Q. 現況調査が終わったら、もう任意売却はできませんか?

そうとは限りません。法律上は買受人が代金を納付するまで競売の取下げ自体は可能とされていますが、実務上は期間入札が始まる前がほぼ最終リミットです。現況調査が終わっていても、期間入札の公告・入札に入る前であれば、任意売却に切り替えられる余地が残っていることが多いです。ただし時間との勝負になりますので、できるだけ早く専門家に相談してください。

Q. 回収会社から「いつまでに出ていけ」という通知は来ますか?

来ません。競売は裁判所の手続きであり、退去のタイミングは競売の進行と買受人との関係で決まります。債権者や回収会社が「いつまでに退去せよ」と直接通知するものではありません。ただし、だからこそ放置すると自分で動かないまま時間が過ぎてしまいます。退去通知が来ないことを安心材料にせず、自分から動くことが大切です。

まとめ|現況調査の通知が来たら、その日に動く

ここまで読んでくださった方に、もう一度結論をお伝えします。

  • 現況調査は競売手続きの序盤の作業であり、来た=即退去ではありません。明渡しまでには、裁判所のスケジュールによりますが複数の段階があります。
  • 現況調査では、執行官と評価人が室内外の確認・写真撮影・占有状況の聞き取りを行います。回収会社(債権者側)は同席しません。
  • 立入りを拒否しても調査は実施され、競売は止まりません。
  • 期間入札が始まる前であれば、任意売却に切り替えられる可能性が残っていることが多いです。競売より高く売れれば、残債も生活再建の負担も変わります。
  • 期限の利益を喪失すると、残元金全額に年14.5〜14.6%程度(契約による)の遅延損害金がかかります。3,000万円なら1日約1.2万円。放置するほど負担は膨らみます。
  • いちばん危険なのは、残り時間を計算して安心し、動かないことです。

現況調査の通知を前にした不安は、よくわかります。でも、その不安を「動くエネルギー」に変えてください。残り時間を数えるのではなく、今日、専門家に「自分の場合はまだ間に合うのか」を確認する。それが、半年後・1年後のあなたの状況を大きく変えます。

放置して良くなることは、何一つありません。現況調査の通知が来た、その日に動いてください。

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