誰しもがいつか経験することになる親の死亡。気持ちが落ちているにもかかわらず、やることは想像以上にたくさんあります。事前にやることを確認しておきたいとお悩みではありませんか?
私は15年間債権回収会社に勤務しており、仕事柄相続や民法には一般の人よりも知識があります。また、FPとしてもたくさんの人たちと接し、いろいろなお話をうかがってきました。
この記事では、親が亡くなったときにやるべきことをまとめています。もしもの前に、事前に確認しておくようにしておくことで、悔いのない納得のいくお別れができるようになります。
- 大切な人とのお別れに悔いを残したくない
- 遺された親族と揉めたくない
そんな人は、ぜひ参考にしていただき、有事に備えておくようにしましょう。
親が亡くなったら何をすればいいの?
そもそも何をやったらいいのか、まったく知識がないので不安。そういった人もたくさんいらっしゃいます。誰しもどこかで経験することになるとはいえ、知らないことばかりなのは当然です。まずは、最低限どんなことをやるべきなのか、基本をおさえておきましょう。
- 葬儀
- 全般的な手続き
- 相続
基本的に、このタイミングではじめて経験するものが多いのではないかと思います。
葬儀
故人を偲び、冥福を祈る大切な儀式です。葬儀を行うことで、周囲の人々も気持ちの整理をすることができますし、遺された人々が思い出を語らい、故人を送り出すことができます。
一般的には、以下の3つをセットにして「葬儀」と呼びます。
- 通夜
- 告別式
- 火葬
全般的な手続き
実はあまり多くの人が認識していないのがこれです。
葬儀、保険、預貯金、役所への届出、相続などなど、手続きが多岐にわたるため、遺族の方はここに多くの時間と体力を使うことになります。
期限が設けられているものも多いため、できれば複数名で協力し、分担してもれなく実施するようにしたいものです。
親が亡くなった当日に行うこと
親が亡くなったその日に行うことは以下のとおりです。
- 死亡診断書をもらう
- 訃報の連絡を行う
- 葬儀屋への連絡を行う
- お通夜・お葬式の打ち合わせ
それぞれのポイントについて、細かく確認していきましょう。
死亡診断書をもらう
親がなくなったら最初にやるべきこととして、医師から死亡診断書をもらうことが挙げられます。
事故または突然死の場合には、警察が検視を行い「死体検案書」という書類を作成してもらわないと死亡診断書は出してもらえないため、この場合は少し時間がかかります。
訃報の連絡を行う
親と縁が深かった人に対し、親が亡くなったことを連絡します。素早く、かつ確実に伝える必要があるため、通常は電話で伝えるのが一般的です。
この段階ではまだ葬儀の日程などは決まっていないことがほとんどですから、「葬儀の日程は改めて連絡いたします」と添え、連絡したことをメモなどに記録しておくのが望ましいです。
葬儀屋への連絡を行う
葬儀の手続きを行うために、葬儀社に連絡を行います。
とはいえ通常はどの葬儀社に連絡すればいいのかわからないことがほとんどだと思います。このため、葬儀屋はなるべく事前に決めておくのが望ましいです。
もしもこの時点で葬儀社が決まっていない場合には、病院に相談をすると紹介してもらえます。葬儀社に死亡診断書を渡すと、煩わしい手続きを代行してくれるので、遠慮なく相談しましょう。
お通夜・お葬式の打ち合わせ
葬儀社の担当者と葬儀などについての打ち合わせを行います。打ち合わせはとても短い時間で行うので、要点をおさえておくことが大切です。おもに以下のようなことを取り決めると思ってください。
- 遺体の引き取り
- 通夜や葬儀についての提案・費用確認
- 通夜の段取り
- 葬儀の段取り
親が亡くなった2日目に行うこと
親が亡くなった2日目に行うことは、大きくは以下のとおりです。
- 死亡届を提出する
- 火葬の申請をする
- お通夜を行う
死亡届、火葬の申請については、葬儀社が代行してくれるのが一般的です。ただ、もちろん自分で行うこともできるので、ここでは自分で行う場合についての解説をしていきます。
死亡届を提出する
まず、死亡届はどこで手に入れるの?と思った方も多いと思います。実は死亡届の書式は「死亡診断書」とセット。紙の右側が死亡診断書、左側が死亡届となっています。
死亡届に記載するのは届出人で、家族や兄弟などです。ここに記載する届出人(相続人)は法律で定められているため、しっかりと「誰を記載するのか」を理解して記載する必要があります。
また、提出先は亡くなった親の本籍地や亡くなった場所を管轄する役所ですので、不明点がある場合にはあいまいなまま記載するなどせず、管轄の役所に相談すれば丁寧に教えてくれます。
なお、死亡届には「死亡から7日以内」という提出期限があります。遅れずに提出するようにしましょう。
火葬の申請をする
日本の法律では、火葬ができるのは死後24時間以上経過してからと定められています。葬儀が終わったら遺体は火葬を行うのが一般的ですが、火葬の手配はこの時点でしておきます。
火葬の手配には「火葬許可証」という書類が必要ですが、この書類は役所に備え付けられています。死亡届を提出する際に、必要事項を事務員に伝えます。
記載内容は以下のとおりなので、役所に行ってから慌てて確認するのではなく、事前に調べてメモをとった上で役所にいくようにしましょう。
- 故人(亡くなった親)の本籍地
- 現住所
- 火葬場
お通夜を行う
お通夜は、地域によって形式が異なることも多いですが、実際には葬儀社に相談し、流れや手続き全般について確認しておくようにしましょう。
遺体の納棺、会場へ運ぶなどは、大変にデリケートな事柄です。また、大掛かりな準備も必要になりますので、葬儀社にすべて任せるべき業務内容です。控室の準備や宗教者へのご挨拶、通夜の式次第についてもすべて葬儀社が取りまとめてくれます。
お通夜の流れを確認し、開始時刻が決まったら、開始時刻までに会場の準備を葬儀社と共同して終わらせます。実際にお通夜が始まったら、司会・進行も葬儀社が中心となって行います。遺族はその進行に従って滞りなく式を完了させます。
親が亡くなった3日目に行うこと
親が亡くなった3日目にはお葬式と遺体の火葬を行います。順番に確認していきます。
お葬式を行う
お葬式は、お通夜と同じく葬儀社が主導して執り行うのが通常ですが、地域によっては昔からの風習に従うべきというところもあるため、できれば事前に確認しておくと良いでしょう。
火葬を行う
火葬は、通常はお葬式の日と同日に行います。最期のお別れを行い、喪主が遺体と一緒に霊柩車で火葬場に向かいます。火葬場には火葬許可証を持っていくことを忘れないようにしましょう。
他の親族はタクシーなど別の移動手段で火葬場に向かいます。
火葬場に着いてから、約1時間ほどで火葬が行われます。親族一同で今後のことについて話し合うタイミングでもあります。
四十九日までに行うこと
葬儀が終われば、次の法事は四十九日です。ここでは四十九日までに行っておくべき手続きについて解説します。期限がタイトなものが多いので、余裕をもって忘れずに実施しましょう。
健康保険の資格喪失届
日本は国民皆保険の国です。親世代であれば国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していることも多いと思いますが、この場合には資格喪失届を提出する必要があります。
亡くなった人が加入している医療保険によりとるべき手続きが異なることに注意が必要です。また、他の手続きも併せて行うべきものがあるので、丁寧に一つ一つ確認していくことが重要です。
介護保険の資格喪失届
親が65歳以上の場合または40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合、亡くなってから14日以内に介護保険の資格喪失届を提出する必要があります。
資格喪失届は、亡くなった親の住所を管轄する役所ですが、役所によっては死亡届を出すことで介護保険の資格喪失手続きも行ってくれるところもあるので、死亡届を提出した際に確認しておくのがいいでしょう。
年金受給停止手続き
亡くなった親が年金を受給している場合、亡くなったと同時に年金を受給する権利もなくなります。このため、役所に「受給権者死亡届(報告書)」を提出します。
日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合には、年金受給権者死亡届の提出は不要ですので、確認するようにしましょう。
世帯主の変更
亡くなった親が世帯主であった場合、亡くなってから14日以内に、役所に対し「世帯主変更届」を提出します。これにより、世帯主が新しい人に変更されます。
ただし、新しい世帯主が明白な場合(そもそも同世帯にもう一人しか存在しない場合など)は、世帯主変更届の提出が不要となることもあります。
四十九日法要の手配
いろいろとあわただしく手続きを行っていると、あっという間に四十九日法要がやってきます。この法事も葬儀同様に大変重要な仏事なので、事前にしっかりとやるべきことを確認して臨むようにしましょう。
位牌や仏壇、また僧侶へのお布施など、やることは多いのですが実はそれほど準備期間はなく、早めの手配が望ましいです。四十九日法要の手配については、別記事で詳細をお伝えするので、そちらも参考にしてください。
香典返しの手配
葬儀の際に受け取ることになる香典。香典には大切な家族を失った遺族を励ますという意味が込められています。香典返しは、四十九日の法要が済んだという報告も兼ねて贈ります。
かつては喪主が持参して一人ひとりに手渡しを行っていましたが、さすがに最近ではそれは一般的ではなく、挨拶状を添えて配送するのが通常です。
速やかに行うこと
他にも、親が亡くなってから速やかに行うべき手続きは複数あります。こちらも順に確認していきましょう。
銀行へ連絡する
口座名義人が亡くなると、銀行は口座を凍結するため預金を引き出すことができなくなります。
ただし相続税法が改正され、亡くなった人名義の口座からも相続人であれば一定額までは口座からお金を引き出すことができるようになりました。亡くなった際に行う手続きはとても多く、お金もかかります。また、お金は遺産争いのトラブルになることも多いので、そうならないように遺族間で話し合いを行い、故人の預金を使うことは有力な選択肢です。
運転免許証の返却
亡くなった親が運転免許証を持っている場合であっても、通常は運転免許証を返納する必要はありません。ただし、運転免許証更新の通知が届くことになるため、気にされる場合には返納手続きを行っておくのがいいでしょう。
クレジットカードの解約
クレジットカードの解約はカード会社によって異なります。
家族・親族などの相続人から連絡をする場合には、カード会社に電話を入れればその電話口で解約できるところもありますが、カードの利用残高が未払いである場合には、まずはその清算を行うことが必要です。
ライフラインの名義変更・解約
亡くなった人の名義でライフライン(電気・ガス・水道)を利用していた場合について、いずれの場合も大まかな流れは同じです。
ライフラインの契約会社に連絡し、契約者死亡の事実を伝え、対応してもらうように伝えましょう。通常は書類(契約者変更届等)が送付されてくるので、その書類に必要事項を記載して返送すると手続きが完了します。
まとめ
見ていただいたとおり、親が亡くなったときにやるべきことは多岐にわたります。
身近な人に死に触れることは普通はそう何度も経験するものではありません。気持ちが落ち着く前にさまざまな手続きを行うことはとても大変なことです。
いざその状況になった時に「なにをどうしたらいいのかわからない!」と慌てることのないよう、できれば親が存命であるときに、家族や近親者と確認しておくことをおすすめします。
そうはいっても不安だ、相談できる相手も近くにいない、という場合には、専門家や代行サービスなどを利用するのも一つの手です。
身近な人が亡くなった場合に慌てることのないよう、まずは知ることから始めておくと良いと思います。